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概要

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2021年度 新任先生のご紹介・ごあいさつ新任先生からごあいさつ工学部基礎理工学科准教授名な倉ぐら 誠まこと先生勉強の楽しさを伝えたいこの場をお借りして皆さまにご挨拶させていただけることを嬉しく思います。本学のキャンパスで日々、元気な学生たちに接していると私自身も不思議と元気になりますし、ときには自分の10代後半から20代前半の頃が懐かしく、せつなく思い出されることもあります。私は埼玉県北部の高校に通っていました。当時、陸上部に所属してグラウンドを走り回り、家に帰ると疲れ果ててしまうような毎日。友人とは将来の夢についてよく語り合っていました。私が数学を志したのもその頃です。ある日、学校の図書館でたまたま手に取った本に載っていた公式に、強烈な感動を覚えたのです。その数式の意味を理解したいというのが最初の動機でした。その後、大学に進んで数学を本格的に勉強するようになりました。数学はすぐに理解できるほど甘くはなく、自分には向いてないのではないかと苦しんだこともあります。苦しみながらも市民マラソンに参加したり、自転車や水泳などに挑戦してみたり、アルバイトに没頭したりと,勉強から何度も逃避してしまうような悪戦苦闘の学生時代でした。しかし、それでも勉強を続ける原動力になったのは、とにかく数学をわかりたいという気持ち、その先はどうなっているのか知りたいという好奇心だったように思います。さて、工学系の学生でも、実は数学系科目が苦手な学生がいるようです。私はこれまでの教育経験の中で、そのような学生にも興味を持たせる授業の工夫を考え、試行錯誤を重ねてきました。基礎を丁寧に教えることは重要ですが、それは単に問題の解法を教えるだけでは不十分です。今年度、私は「幾何学」、「微分積分・演習」のほか基礎理工学科の科目を担当していますが、授業では常々、数式には意味がある、ということを強調しています。例えば、実数値関数としての指数関数y=ekx が増加/減少関数かどうかは、定数k の符号で決まります。数学が苦手な学生にとってこの事実は単なる暗記項目ですが、微分方程式の導入時にマルサスの人口モデルを紹介する場面で、k が出生率と死亡率との差であると学生が理解した瞬間、彼らの表情は明らかに変わります。そして彼らは、定数k の意味と指数関数のイメージを直観的に理解するはずです。また、トランプのカード52枚から1枚を無作為に引き、そのマークを当てるゲーム(試行)を考えるとしましょう。当たる確率は1/ 4= 0.25 ですから、100回これを繰り返し26回的中させる事象が起ることは珍しくありません。しかし、的中率はどちらも 26/100= 0.26= 2600/ 10000 であるものの、この試行を10000回繰り返したとき、2600回的中させるという事象はまず起こらないと断言できます。この話題には多くの学生が驚きますが、この背景には中心極限定理という深い数理が潜んでいます。数学の教科書は汎用的に記述されていますから、その練習問題や試験を暗記で乗り切ったとしても、それでは学習した内容は印象には残らず、使えません。単に公式を暗記させるのではなく、上述の例のように、授業で扱う内容や数式に意味をつけることで学生の印象に残るような授業を提供したいと考えています。学生たちが、必要な場面で数理科学的な正しい判断ができるようになるために、彼らが勉強したくなる「きっかけ」を与え、好奇心を引き出す授業を実践したいと思います。しかし、与えられたことだけ淡々とこなしているだけでは勉強は面白くないかもしれません。いま学んでいることからもう一歩踏み込んでみると、いろいろ見えてくることがある…。授業では、ときにはそんな遊び心を持って、勉強することの楽しさを伝えたいと考えています。プロフィール埼玉県蕨市で生まれ、幼少時代は熊谷市で過ごす。1997 年3月 筑波大学 第一学群 自然学類 卒業2004 年3月 筑波大学大学院 博士課程 数学研究科 修了2004 年4月  関東学院大学 工学部 非常勤講師2005 年4月 奈良工業高等専門学校 一般教科 講師2011 年4月 同 准教授2021年4月~  大阪電気通信大学 工学部 基礎理工学科准教授学位: 博士(数学)所属学会: 日本数学会、日本数学教育学会専門は数学、とくに表現論、組合せ論。趣味はピアノと数学。好きな食べ物はコーヒーとバナナ。18 後援会たより No.47